著書・訳書

日本医事新報 No5308(2026年1月17日号) 日本医事新報社 

本来ここでは単行本以外は取り上げないのだが、この原稿はいったん「日本医事新報」誌に掲載された後、「私の治療Ver5.0」として単行本化されたものの中に収められる予定であるということなので例外である。 執筆を担当したのは『治療法の再整理とアップデートのために:専門家による<私の治療>』における「境界性パーソナリティ障害」の項目である。 執筆依頼を受けたのは2年前だが、今年出版予定の私の著作の執筆時期と重なっていたため、一般的な治療指針に比べて多少なりとも個人色が強いかも知れない。 あくまでも医師向けの治療指針ではあるが、一般の方でも興味がある人はお読みになると役立つとは思う。  

トラウマをめぐる10の神話ー最新研究から解き明かす性格特性・レジリエンス・治療ー                            (ジョエル・パリス著、黒田章史・市毛裕子共訳)

  自分で訳したから言うわけではないが、本書は専門家だけでなく、患者や家族にとっても、文字通り必読の書物である。 本書のタイトルに「神話」という言葉が掲げられていることから、一見、扇情的な内容を想像される方もいるかも知れない。 しかし、実際にはその正反対であり、トラウマに関する多くの通説を、科学的エビデンスに基づいて冷静に見直そうとする誠実な書物である。 パリスは、政治的・感情的なバイアスから距離を取り、精神医学や心理学の知見をもとに、トラウマとパーソナリティの関係を明快に描き出している。 とりわけ、「トラウマを経験したからといって必ずしも有害な結果がもたらされるとは限らない」「人間のレジリエンス(回復力)は過小評価されている」といった指摘は、臨床に携わる専門家だけでなく、広く一般の読者にとっても大きな示唆を与えるものだろう。 その一方で、本書の内容は、現在の「トラウマをめぐる言

ADHD大国アメリカ つくられた流行病

■キース・コナーズが問いかけたことー訳者あとがきに代えてー デューク大学の同僚であり、盟友でもあったアレン・フランセスによって、死の翌日に公表されたキース・コナーズ追悼文は、以下のように始まっている(BMJ;358:j2253, Published 2017 July 06)。「2017年7月5日に亡くなる直前、キース・コナーズはこの追悼文の執筆に協力してくれた。彼は自分自身のことについて語りたかったわけではない。注意欠如多動症(ADHD)について最後の警告をしたかったのである。50年前、彼はこの疾患の存在を明らかにし、概念の正当性を立証するために尽力した。それにも関わらず、最近ではその使用に全力でブレーキをかけようとしていたのである」。 コナーズはそうせずにはいられなかった。小児期のADHDの本当の有病率は2〜3%程度だと考えていたにも関わらず、アメリカにおいて診断される子どもの割合は異

「境界性パーソナリティ障害治療ハンドブック ー<有害な治療>に陥らないための技術ー(J.G. ガンダーソン著、黒田章史訳、岩崎学術出版)」

  ■訳者あとがき   あなたが医療あるいは臨床心理に携わる専門職であるか、この疾患に悩んでいるご当人 であるか、ご家族であるかはひとまず問わないことにしよう。本書を手に取ったからに は、あなたは境界性パーソナリティ障害(BPD)に多少なりとも興味を持っているはずで ある。J.G.ガンダーソンによって著(あらわ)された本書は、そのような人たちのいずれ に対しても、必要最小限の正確な知識を提供するためのものである。 必要最小限の知識なんて、わざわざ本書など読まなくても、今どきネットやメディア を通していくらでも身につけられると思う人もいるかもしれない。そう思う人はこれか らBPDの基礎知識に関していくつか問題を出すので、どれほど答えられるか試しに解い てみてほしい。採点は1=正しい、2=間違いではないが、適切とは言えない、3=間違 っているだけでなく、有害ですらある、という形でつけ

パリスの著作における訳語の訂正について(2014年 5月12日)

2014年4月末に金剛出版より刊行されましたジョエル・パリス著「境界性パーソナリティ障害の治療ーエビデンスに基づく治療指針ー」について、一部の訳語および訳文に誤りが認められましたので、以下のように訂正いたします。 なお今後の出荷分については金剛出版より正誤表が挟まれることになっております。 すでに購入された方にはお詫びするとともに、以下のような形で訂正した上でお読みいただくようお願い申し上げます。   ■正誤表 1.「合併」を「併存」に変更する箇所 p.9 目次の10行目(「合併症と併存症」 → 「併存症と共発生症」) p.36 22行目(全国合併症研究 → 全国併存症研究) p.37  12行目(全国合併症追試研究 → 全国併存症追試研究) p.45 5行目(見出し)、12行目、17行目、20行目 p.46 8行目 p.56 31行目、32行目 p.62 16行目(見出し)、1