
「境界性パーソナリティ障害の治療ーエビデンスに 基づく治療指針ー(J・パリス著、黒田章史訳、金剛 出版)」
■訳者あとがき 「Get a life」という言い回しがある。取るに足らぬこと、見込みのないことに多くの時間を費やしている人物に対して、それまでのやり方を見直すように促す慣用句である。本書の第9章に登場するこの言葉は、ある意味で本書のキーワードと言って良いかも知れない。最近得られた実証的データに基づき、BPD患者の治療に携わる専門家に対して、家族に対して、そして何よりもBPD患者自身に対して、本書の著者であるパリスは、以下のような形で「Get a life」と繰り返し呼びかけているのだから。 まずパリスはBPDを他の何らかの障害(の異型)とみなし、この診断をつけることを回避するのを止めるよう専門家に対して呼びかける。BPDを無視したところで、こうした患者が抱える症状や問題が消えてなくなってくれるわけではないし、仮に大うつ病や双極性障害などと診断して薬物療法を試みたところで、そ