著書・訳書

「境界性パーソナリティ障害の治療ーエビデンスに 基づく治療指針ー(J・パリス著、黒田章史訳、金剛 出版)」

■訳者あとがき   「Get a life」という言い回しがある。取るに足らぬこと、見込みのないことに多くの時間を費やしている人物に対して、それまでのやり方を見直すように促す慣用句である。本書の第9章に登場するこの言葉は、ある意味で本書のキーワードと言って良いかも知れない。最近得られた実証的データに基づき、BPD患者の治療に携わる専門家に対して、家族に対して、そして何よりもBPD患者自身に対して、本書の著者であるパリスは、以下のような形で「Get a life」と繰り返し呼びかけているのだから。 まずパリスはBPDを他の何らかの障害(の異型)とみなし、この診断をつけることを回避するのを止めるよう専門家に対して呼びかける。BPDを無視したところで、こうした患者が抱える症状や問題が消えてなくなってくれるわけではないし、仮に大うつ病や双極性障害などと診断して薬物療法を試みたところで、そ

「境界性パーソナリティー障害・クリニカルガイド」 (J・G・ガンダーソン著、黒田章史訳、金剛出版) 

■訳者あとがき 「私(JG)は家族を不当に中傷する原因となったり、家族を治療から排除するか、あるいは不適切な形で関わらせたりするという、大半は的外れな取り組みの原因となったりした文献を寄稿していた者である。だから境界例に罹患している人物の家族が治療者にとっての重要な協力者であり、彼らが精神病理の原因に何らかの関係を持ってきたかどうかに関する一連の問題を、大部分はうまく解決できるという見込みを持って始める治療を、今では私自身が提示していることに幾分かの気恥ずかしさを覚える」(Gunderson J.G.他: Families of borderline patients: A psychoeducational approach , Bull. Menninger Clin., 61(4), 446-457, 1997) もちろん<家族を不当に中傷>したり、<家族を治療から