よくある質問

Q社会的スキルの向上を謳(うた)っていますが、具体的にはどのようなことをするのでしょうか。
A

他人との共同作業を適切な形で継続することができる能力、あるいは他人との共同生活を適切な形で継続することができる能力を向上させるためのトレーニングを(できれば家族の協力のもとに)おこなっていくことになります。
詳しくは「治療者と家族のための境界性パーソナリティ障害治療ガイド(黒田章史著、岩崎学術出版)」を読んでいただけるとイメージをつかみみやすいと思います。

Q問題行動や症状はそれほど激しくなくなってきている気がしますが、社会に出て行こうとせず、家で引きこもっています。それに対する治療方法はありますか。
A

誤解されていることが多いようですが、多くの場合「引きこもり」状態に陥るのは、患者さんの意思に基づくものではありません。社会に出て行こうにも、社会的能力の(しばしば意外なくらい深刻な)不全があるためにうまくいかず、失敗を積み重ねていく内に次第に気力もなくなっていく、という経過を辿る場合が殆どではないかと思われます(ここでは統合失調症などの精神病に起因する「引きこもり」は除外して考えています)。
当院でおこなっているような、社会的能力の不全に対応するためのトレーニングは、BPD患者だけでなく、非精神病性の「引きこもり」全般に対する治療法としても有効です。

Q家族も協力して治していくということですが、具体的にはどういうことでしょうか。
A

当院では家族の方に出来る限り面接に参加してもらうようお願いするだけでなく、患者さんと生活する中で気付いたこと、気になったことを記録してもらうようお願いしています。
家族の方に積極的に治療に関わりを持ってもらう理由は、BPD患者が持つ社会的能力の不全にまつわる問題を、個人面接という特殊な環境の中で詳細に観察することは極めて難しいためです。
なぜならこうした問題は、日常生活を送る中で認められる患者の何気ない言動を、他人の目で注意深く観察しない限り明らかになってこないからです。
このような方法で問題を明らかにした上で、家族の方の協力のもとに治療的介入をおこなっていくことになります。
詳しくは「治療者と家族のための境界性パーソナリティ障害治療ガイド(黒田章史著、岩崎学術出版)」を読んでいただけると良いかも知れません。

Qどれくらいの期間の通院が必要なのでしょうか。
A

患者さんによっても違うので一概には言えませんが、一応3年程度を目安にしてもらうと良いかも知れません。
3年というと長く感じるかも知れませんが、もちろん初診時と同じ状態が3年間続いた末に、突如として良くなるわけではありません。
むしろBPDの治療では、同じパターンをずっと繰り返しているように見えながらも、悪い状態に陥る頻度やその程度、そして回復力が少しずつ改善していくという、らせん階段を昇っていくような形で改善が生じるのが特徴と言って良いと思います。
例えばらせん階段を上り続けて、ふと下を覗いて見たら、1年後には1年分の、2年後には2年分の高さまで昇っていて、3年ほどするとそれほど治療を必要としない地点にまで到達していた、というイメージでしょうか。