よくある質問

QこのクリニックではBPDの専門的治療をおこなっているということですが、他でおこなわれている治療とはどこが違うのでしょうか。
A

激しい症状がみられるので誤解されがちですが、もともとBPDは長期的には寛解していく(診断基準を満たさなくなる)傾向がみられることが明らかになっています。
弁証法的行動療法(DBT)、メンタライゼーションに基づく治療(MBT)などの、これまでBPDに特異的とされてきた治療は、こうした寛解のプロセスを早めることが可能であるとされています。
ただし残念ながらこれらの治療をおこなった場合でも、BPDにとって最も深刻な問題である社会的能力の深刻な不全は、ほとんど改善されることはありません。

当院でおこなう治療は、BPD患者が示すこうした社会的能力の不全を改善するためのトレーニングを(できれば家族の協力のもとに)おこなうという点に特徴があります。

Qパーソナリティ障害は性格だから治らないと通院先の医者から言われましたが、本当でしょうか。
A

BPDに関する限りそれは明確に誤りです。実際にはBPDの改善のスピードはかなり速く、2年で約半数の患者さんが診断基準を満たさなくなります。

問題は診断基準を満たさなくなった患者さんであっても、社会的能力の深刻な不全が残る場合が多いことです。
当院ではこの「患者の社会的能力の不全」を改善するためのトレーニングを(できれば家族の協力のもとに)おこなうという部分に特に力を注いでいます。

Q色々なクリニックに行ったのですが、それぞれ違うことを言われるので、どうすれば良いかわかりません。「治ること」に関して何を目安にしたら良いのでしょうか。
A

BPDで「治す」べき症状にはさまざまなものがあります。自傷行為や自殺企図などの衝動的傾向、感情が不安定で怒りっぽいこと、対人関係でトラブルが生じやすいこと、さらにストレス下で一時的に精神病を思わせるような症状が出現することなどは、その中でも代表的なものと言って良いでしょう。

確かにこれらの症状を改善することも重要ではあります。しかしこれらの症状のほとんどは、専門的な治療を受けることがなくとも、10年ほど経過を追う内には改善されてしまうものなのです。
そしてこれらの症状のほぼ全てが改善された後でも、BPD患者の大半は社会生活を充分に送れるようにはなりません。
これがいかに深刻な事態であるかを想像してもらうと、社会的能力を改善させることに全力を注ぐという当院の方針に納得していただけるのではないでしょうか。

Q別の病院に通院しているのですが、病状が改善されていない気がします。転院を考えた方が良い時期の目安について教えて下さい。
A

BPDに罹患している患者の場合、適切な治療をおこなうなら自傷行為や自殺企図、激しい怒り等はおおよそ2ヶ月から6ヶ月の間に改善が始まると言われています(意外に思われるかも知れませんが、こうした激しい症状はBPDで最も早く改善が見られる領域の一つです)。

逆に言うならこれらの症状に関して、半年以内にほとんど改善の兆しが見られないようなら、適切な治療がおこなわれていない可能性があるということです。

通院先の医師に病状が改善されない理由について質問し、理にかなった答えが返って来ないようなら転院を考えても良いかも知れません。

Q入院した方が早く治るのではないでしょうか。
A

1990年代までは、BPD患者に対して(しばしば長期の)入院治療をおこなうことも珍しくありませんでした。しかし病棟という保護的な環境に置かれることにより、患者に退行的な依存が引き起こされるなど、さまざまなマイナスの反応が生じることが明らかになったこともあり、最近ではそのような治療がおこなわれることは殆どなくなりました。

現在でもBPD患者に対して入院治療がおこなわれることはありますが、それは患者の自殺企図あるいは暴力行為に対する危機介入や、神経学的あるいは心理学的な精査を目的とした、短期入院が主となっています。

Q本人には治療意欲がないのですが、家族だけでの相談には乗ってくれるのでしょうか。
A

当院では家族のみでの受診に積極的に応じています。ただし単なる相談ということではなく、患者さんの引き起こすさまざまな問題に対する対処の方法について、そして患者さんの社会的能力をできるだけ引き上げるための方法について、御家族と一緒に検討した上で、少しずつ実践していただくことになります。

ある程度患者さんの病状が改善されて来ると、後から患者さんが治療に参加するようになることも少なくありません。