よくある質問

Q初診までの流れについて教えてください。
A

当院は完全予約制ですので、電話で受診の申し込みをしていただくことになります。自費診療なので保険証は必要ありません。
可能なら受診に至るまでの経緯や通院歴を簡単にまとめて持参していただくと、初診の際に時間を有効に使えると思います。

Q他の医療機関からの紹介状は必要でしょうか。
A

紹介状がない場合でも受診は可能です。ただし治療上これまでの経過や処方の情報が必要な場合は、以前に通院していた医療機関に紹介状発行をお願いすることもあります。

Q薬を処方してもらうことは出来るのでしょうか。
A

可能です。ただし保険はききませんので、全額自己負担ということになります。

Qどんな病気、症状を対象として治療をおこなっているのでしょうか。
A

当院では境界性パーソナリティ障害(BPD)をはじめとした、さまざまなパーソナリティ障害や引きこもり、家庭内暴力、不登校、摂食障害などに対する専門的治療をおこなっています。

また「大人の発達障害(自閉症スペクトラム障害)」「大人のADHD」などと診断されている患者さんのうち、幼少期(12歳まで)に自閉症スペクトラム障害やADHDの症状が明確に認められていなかった人たちは、実際には別の疾患に罹患している可能性があると思われます。

当院ではそうした患者さんが社会的スキルを向上させるために必要な治療をおこなうことが可能です。

Q自費診療なので費用が高額なのが気になります。なぜ自費診療なのでしょうか。
A

精神療法をおこなう必要がある患者さんに対して、保険診療の枠内で充分な対応をするのは極めて難しいためです。
たとえば境界性パーソナリティ障害(BPD)の場合、残念ながら薬物療法は効果に乏しいと言わざるを得ません。またBPDに関して最も深刻な問題であることが明らかになりつつある、社会的能力の不全に対処するためには、この疾患の特性を充分に配慮しつつ、そうした能力を補うために特化されたトレーニングをおこなう必要がありますが、それを保険診療の枠内で実施するのはすこぶる困難です。

当院は自費診療なので、当面の費用負担が大きいのは事実ですが、保険診療の枠内で効果の乏しい外来および入院治療を漫然と継続するのに比べれば、結局のところ決して「高くつく」訳ではないと考えています。

Qセカンドオピニオンを希望していますが、対応してもらえるのでしょうか。
A

対応可能です。もし出来れば、それまでの治療の経緯を簡単にまとめた資料を持ってきていただけると限られた時間を有効に使えると思います。

Q遠隔地なので定期的に通院するのが難しいのですが、電話などを用いた治療には対応してもらえるのでしょうか。
A

初回だけは直接来院していただきますが、次回以降は電話で対応することが可能です。その場合はemailあるいはfaxで患者さんの生活記録を送っていただき、それに基づいて治療を進めていくことになります。

QこのクリニックではBPDの専門的治療をおこなっているということですが、他でおこなわれている治療とはどこが違うのでしょうか。
A

激しい症状がみられるので誤解されがちですが、もともとBPDは長期的には寛解していく(診断基準を満たさなくなる)傾向がみられることが明らかになっています。
弁証法的行動療法(DBT)、メンタライゼーションに基づく治療(MBT)などの、これまでBPDに特異的とされてきた治療は、こうした寛解のプロセスを早めることが可能であるとされています。
ただし残念ながらこれらの治療をおこなった場合でも、BPDにとって最も深刻な問題である社会的能力の深刻な不全は、ほとんど改善されることはありません。

当院でおこなう治療は、BPD患者が示すこうした社会的能力の不全を改善するためのトレーニングを(できれば家族の協力のもとに)おこなうという点に特徴があります。

Qパーソナリティ障害は性格だから治らないと通院先の医者から言われましたが、本当でしょうか。
A

BPDに関する限りそれは明確に誤りです。実際にはBPDの改善のスピードはかなり速く、2年で約半数の患者さんが診断基準を満たさなくなります。

問題は診断基準を満たさなくなった患者さんであっても、社会的能力の深刻な不全が残る場合が多いことです。
当院ではこの「患者の社会的能力の不全」を改善するためのトレーニングを(できれば家族の協力のもとに)おこなうという部分に特に力を注いでいます。

Q色々なクリニックに行ったのですが、それぞれ違うことを言われるので、どうすれば良いかわかりません。「治ること」に関して何を目安にしたら良いのでしょうか。
A

BPDで「治す」べき症状にはさまざまなものがあります。自傷行為や自殺企図などの衝動的傾向、感情が不安定で怒りっぽいこと、対人関係でトラブルが生じやすいこと、さらにストレス下で一時的に精神病を思わせるような症状が出現することなどは、その中でも代表的なものと言って良いでしょう。

確かにこれらの症状を改善することも重要ではあります。しかしこれらの症状のほとんどは、専門的な治療を受けることがなくとも、10年ほど経過を追う内には改善されてしまうものなのです。
そしてこれらの症状のほぼ全てが改善された後でも、BPD患者の大半は社会生活を充分に送れるようにはなりません。
これがいかに深刻な事態であるかを想像してもらうと、社会的能力を改善させることに全力を注ぐという当院の方針に納得していただけるのではないでしょうか。

Q別の病院に通院しているのですが、病状が改善されていない気がします。転院を考えた方が良い時期の目安について教えて下さい。
A

BPDに罹患している患者の場合、適切な治療をおこなうなら自傷行為や自殺企図、激しい怒り等はおおよそ2ヶ月から6ヶ月の間に改善が始まると言われています(意外に思われるかも知れませんが、こうした激しい症状はBPDで最も早く改善が見られる領域の一つです)。

逆に言うならこれらの症状に関して、半年以内にほとんど改善の兆しが見られないようなら、適切な治療がおこなわれていない可能性があるということです。

通院先の医師に病状が改善されない理由について質問し、理にかなった答えが返って来ないようなら転院を考えても良いかも知れません。

Q入院した方が早く治るのではないでしょうか。
A

1990年代までは、BPD患者に対して(しばしば長期の)入院治療をおこなうことも珍しくありませんでした。しかし病棟という保護的な環境に置かれることにより、患者に退行的な依存が引き起こされるなど、さまざまなマイナスの反応が生じることが明らかになったこともあり、最近ではそのような治療がおこなわれることは殆どなくなりました。

現在でもBPD患者に対して入院治療がおこなわれることはありますが、それは患者の自殺企図あるいは暴力行為に対する危機介入や、神経学的あるいは心理学的な精査を目的とした、短期入院が主となっています。

Q本人には治療意欲がないのですが、家族だけでの相談には乗ってくれるのでしょうか。
A

当院では家族のみでの受診に積極的に応じています。ただし単なる相談ということではなく、患者さんの引き起こすさまざまな問題に対する対処の方法について、そして患者さんの社会的能力をできるだけ引き上げるための方法について、御家族と一緒に検討した上で、少しずつ実践していただくことになります。

ある程度患者さんの病状が改善されて来ると、後から患者さんが治療に参加するようになることも少なくありません。

Q社会的スキルの向上を謳(うた)っていますが、具体的にはどのようなことをするのでしょうか。
A

他人との共同作業を適切な形で継続することができる能力、あるいは他人との共同生活を適切な形で継続することができる能力を向上させるためのトレーニングを(できれば家族の協力のもとに)おこなっていくことになります。
詳しくは「治療者と家族のための境界性パーソナリティ障害治療ガイド(黒田章史著、岩崎学術出版)」を読んでいただけるとイメージをつかみみやすいと思います。

Q問題行動や症状はそれほど激しくなくなってきている気がしますが、社会に出て行こうとせず、家で引きこもっています。それに対する治療方法はありますか。
A

誤解されていることが多いようですが、多くの場合「引きこもり」状態に陥るのは、患者さんの意思に基づくものではありません。社会に出て行こうにも、社会的能力の(しばしば意外なくらい深刻な)不全があるためにうまくいかず、失敗を積み重ねていく内に次第に気力もなくなっていく、という経過を辿る場合が殆どではないかと思われます(ここでは統合失調症などの精神病に起因する「引きこもり」は除外して考えています)。
当院でおこなっているような、社会的能力の不全に対応するためのトレーニングは、BPD患者だけでなく、非精神病性の「引きこもり」全般に対する治療法としても有効です。