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臨床心理士の訓練はどのようにおこなわれるかー当院勉強会の風景からーその2

前回の面接の続きを掲載しよう。

今回の掲載部分では、テーマが仕事に関する問題から、少しずつコミュニケーションに関する問題へと移行していくことになる。

前回と同じように、下線部分は、面接で何が起こっているかについて説明している部分である。

患者役をA、心理士の髙橋をTで示すのも前回と同様である。

T:結構お忙しいんですかね。

A:そうですね、時期にもよりますけど、忙しい時は、もうなんか電話もじゃんじゃんかかってくるし、営業さんからも次々書類をお願いされたりとかもするので。

T:電話がじゃんじゃんかかってきて、営業さんからもお願いされて、忙しい日はすごくあるから、他の人がどういう風にやっているかわかんないっていうことですね(患者の言葉を治療者が繰り返すことを通して、多少なりとも本人が自分の言葉に違和感を感じる可能性を増やすことを狙う)。えーっと、で、それからAさんの方は、そのまあ、この会社はこう言う書き方だったかなって言うのは覚えていないから、その、何て言うんですかね、Aさんの方から、これってこの書き方であっていますか?というか、いつも通りで合っていますかっていう風に聞かれました?(社会的に望ましい行動の枠組みを提示する)

A:そういう指示は営業さんがしてくれるものですから、だから別に私は言われた通りにやるだけだから、だから聞かないですね(言われた以上のことに関心を向けない傾向が明らかになる)

T:なるほど、だから、営業さんの方もえっと、まあ期待してあえて言わなかったのか、つい言い忘れちゃったのかわからないけど(営業の側では、本人が知っていると期待していた可能性があることを改めて指摘)、まあ指示はなくって、Aさんの方も書類のことについては覚えていなかったし、特に営業さんに尋ねなかった(本人が覚えていても良かったし、尋ねても良かったという可能性を指摘)からちょっと、まあ書き方が違うっていうことが起こってしまったと。で、営業さんのその言い方は、Aさんとしたらきつい感じ。えっと、ここ違うだろ、書き方こうだろうっていうふうに、こう、言われて、で、もうパニックになってしまって、頭真っ白になってしまって。まあ本当はその時すぐにすみませんとか、すぐ直しますとか言えたらいいんだけども(社会的に望ましい振る舞い方の教示)、まあ、すいませんは、ちょっと出て来なかったって言うところ。で、なんていうんですかね、その心臓のドキドキしちゃうとか、それは、ちょっと長引いちゃうんですか?

A:そうですね、なんか、書類は直しましたけど、言われた通りに直しましたけど、なんかこう心臓ドキドキしちゃうみたいなのはその日は続いていて。

T:まあ、切り替えられないというか、ずっとドキドキはしていたっていうところですね。で、その、書類まあ、なんとか直せて、渡せましたよね、営業さんに。

A:はい、そうですね。

T:その時営業さんの反応はどうだったんですか?(相手の反応から本人の振る舞い・置かれている状況を把握しようと試みる)

A:それは特に、なんか、なんだったかな、渡して、ただなんか、はいでおしまいっていう感じでしたけど。

T:そのときに、Aさんのほうで一言、なんかこう、いや済みませんでしたみたいなことは言いましたか?(社会的に望ましい振る舞い方の提示)

A:何て言ったかな。なんか、渡す時とかも、その、またなんか怒られたらどうしようみたいに凄いこう、ドキドキしていて。それでなんか、何て言ったかな、何て言ったかまではちょっと良くは覚えていないけど、多分なんか、直しましたみたいなことを言って渡したら、なんか、はい、みたいな感じで受け取って、それでおしまいだった気がするんですけど(特に謝罪をしなかった可能性があることの確認)

T:あ、はいみたいなこと。Aさんの方で直しましたって言って、あ、はいって言って、やりとりはそこで終わりっていうことですね。で、その後もなんか、営業さん怒っているんじゃないかなとか、そういったことちょっと思っちゃうとか、ちょっと話しづらくなっちゃうとかそういうことがありますか?営業さんまだ怒ってるんじゃないかなとか

A:そうですね。なんか、そのあととかも、書類お願いされるの嫌だなみたいな感じで、なんか、またなんか怒られちゃうんじゃないかとか、なんかそういうのはすごい不安になりましたね。

T:また怒られちゃうんじゃないかなっていうところですね。どれぐらい続きますか?そういう気にしちゃうみたいなのは(職場の居心地の悪さの持続期間について尋ねる)

A:なんか、その多分、出来事にもよるんですけど。でもこの営業さんに対しては、なんかちょっと、なんだろうな、なんかドキドキ、まあ、そんな凄くドキドキするわけじゃないけど、なんか緊張しちゃうみたいなのは未だにあります。

T:未だに緊張するということですけれども、この出来事はどれぐらい前だったんですか?(職場の居心地の悪さの持続期間について更に具体的に尋ねる)

A:えっとね、どれぐらい前だろう、2週間ぐらい前かな?

T:2週間ぐらい前。でも、まだちょっと緊張して、書類お願いされるのも嫌だなっていう感じなんですね。なるほど、えっと、それがお仕事のところですね。上司に、上司っていうか営業さんに注意されると、いつまでも引き摺っちゃう。何て言うか、書類お願いされるの嫌だなとか、また怒られちゃうかなっていうふうにちょっと緊張しちゃうっていうところ。ただ、緊張しながらも、たとえば、ご挨拶とか、やりとりはされますか?普通に(職場での枠組みを崩していないかどうかの確認)

A:それは、もちろんしてますけど。

T:なるほど。そういったところがちょっとまあ、さっきのお話でいうと営業さんにまだ怒られているんじゃないかなとか、営業さんにどう思われているのか気になっちゃうところ、を良くしていきたいって言うことなんですかね(当初の治療目標の確認)

A:そうですね、っていうか、まあ営業さんに怒られたっていうので、なんかその後とかは、もしかしたら担当以外の、営業さんも私のこと、なんか思っているのかなとか、そういうのがずっと気になっちゃっうようになって。

T:それはどういう感じなんですか?その担当の営業さんと、担当以外の営業さんがいらっしゃるんですね。(状況・文脈の確認)

A:ああ、そうですね。

T:ずっと、こう、書類をお願いされたりとかっていう担当の営業さんがいらっしゃって、で、他の営業さんにもなんか思われているんじゃないかっていうのはどういう感じなんでしょう(本人にとっての状況・文脈を確認)

A:なんか、妄想みたいな感じですけど。その、営業さんに怒られた時に、他にも会社の中に人がいたりもしたので、なんか、その人たちからも、すごい私がダメなやつみたいなふうに思われているんじゃないかなあとか、そういう風に思っちゃうんですよね。

T:なるほど、その出来事があった後から、他の営業さんの態度とか、例えばなんかこう、声掛けの仕方とかで、凄い変わったことってあるんですか?(具体例の提示要求)

A:うーん、なんかね、具体的にこれがこう変わったっていうわけじゃないんですけど、なんか、こう自分の中でこの人にもダメって思われてんのかなとか。なんか本当は、その担当の営業さんがなんか指示してくれたら、私だってそんな間違えることなかったのにって思うんですけど。でもなんか、それを、なんだろう、他の営業さんとかは知らないし、そもそも指示されていなかったっていうことも知らないだろうから、だからなんか私が怒られたっていうところだけしか他の人は見てないから。だからそうすると、すごいなんか私だけが一方的に、こう怒られちゃって、なんか、嫌だなみたいな気持ちがあって。

T:なるほど、他の営業さんは、なんていうか事情は知らないわけですよね(状況・文脈の確認)

A:そうですね

T:Aさんとしては、担当の営業さんが指示してなかったから、こちらは間違えたっていう経緯っていうか、流れはあるかもしれないけれども、それは、その他の人が知らないから、怒られたところだけ見られていると。だからダメな人って思われているんじゃないかなーっていうところですね。なんかそういうこと言われたことあります?なんかAさんちょっと忘れやすいからとか、ミスしちゃうからとか、そういうこと(具体例の提示要求)

A:それは言われたことないです。

T:それは言われたことない。じゃあ、他の営業さんとか、他の派遣さんとかお仕事している方たちから、Aさんはちょっとダメな人だからというか、そういうニュアンスのことを言われたことは無い、っていうことですね(状況・文脈の確認)。だから、さっきAさんもおっしゃっていたように、ちょっとこれは妄想かもしれないけれども(本人の発言に基づく判断)っていうことで、まあこの辺りも、ちょっと周りからどう思われているか気にしちゃうところっていうことですね。わかりました(確実にわかったことだけを受入れる)。それで、えーっと、この、ちょっとしたことで気にしやすいとか、周りからどう思われているのか気になっちゃうところっていうのは、えっと、今お仕事をしているところで問題になっているようですけれども、前からそういう傾向はありましたか?。たとえばその、学生の頃とか、小っちゃい頃とか、お仕事する前とか、どうですかね(以前からみられたかどうかに関する具体例の提示要求)。

A:なんか、それはもうよくずっとあって(昔から同様のことがあったことの確認)、母からも、A子はすぐに気にするから、みたいなこととか、あんたはいつも気にしすぎだ、っていうのはよく言われているんですけど

T:どれぐらい前からありましたか?。あの、つまり、お母さんからは、どれぐらい前から言われていました?(具体例の提示要求)

A:なーんかわかんないけど、でも中学の時には絶対言われていましたね(具体的な時期の確認)

T:あ、そうなんですね。じゃあ例えば中学生のときに、まあちょっと気になっちゃったなっていうか、周りのお友達にどう思われているか気になっちゃったっていうエピソードはありますか?(具体例の提示要求)

A:うーん、なんか理由は良くわかんないっていうか覚えていないけど、仲良かったグループの子達から、なんかもしかしたら私嫌われちゃってるのかなっていうことを心配して、で、なんかそういうのを母に相談というか、嫌われているのかな、みたいなことを結構言っていた覚えはありますね。

T:なるほど、お母さんに相談されていたんですね。中学生のときに私嫌われちゃっているのかなっていうのを。そしたらお母さんから気にしすぎだよっていう。

A:うーん、なんかそういうことが、多分結構しょっちゅうというか(頻度の確認)

T:しょっちゅうあった。

A:中学、まあ、高校の時もそうだと思うんですけど、なんか、そういうちょっとしたことで、なんか、変に思われているのかな、みたいなこととかを結構母に言っていた(高頻度で母親に相談していたことの確認)んだと思うんですよね。それで母からは、A子はいつもそうやって気にしているみたいなことを言われて。

T:そうですか。中高っていうと、結構かなり前の昔の話ですけど、覚えているところで構いませんが、ちょっとしたことって、どんなことでしょう(具体例の提示要求)

A:何があったのかな。なんかたわいもない話だと思うんですけど、何だろうな。お友達と話していた時に、何だっけな、なんかみんなで、こう盛り上がっていて、なんか私が、他の子が言っているみたいにコメントして。なんか、すごい盛り上がるだろうなって思って言ったんだけど、他の子が言っている時みたいには盛り上がらなくって。なんかこうちょっと、シーンってなるじゃないけど、そういう感じとかになっちゃって。あれっ、何でだろうみたいな。なんかそういうので母に、私のことみんな嫌いなのかな、みたいな感じで言ってたんだと思うんですよね。

T:そうなんですね。どういうお話されていたんですかね(更に具体例を提示要求)

この一見したところ「たわいもない話」は、意外に深刻な問題と関連していることが、次回掲載部分で明らかになる。

そしてこの問題はA氏に限らず、コミュニケーションに関して問題を抱える患者にしばしば見られるようなタイプのトラブルへと繋がっていくことになるだろう。